一峰先生とお酒の席などで話すとき、時折デビュー前の秘話をお話ししてくださる事が多々あった。
　
当時、若かりし頃の先生は、両親から勘当されていたため生活も苦しく、まともに着るものもなかった。
一番安い絣（かすり）の着物と手作りの下駄を履き、どこにでもオンボロ自転車に乗り、出かけて行っては出版社巡りをされていたという。
そんなある日、ピー・プロダクション創始者、漫画家で原作者のうしおそうじ先生に自分の原稿を見てもらいに行った時の話では、うしお先生の単行本とまるでよく似た構図、似たような話の作品を持ち込み、うしお先生に「ここまで真似られたら怒ることもできないね」とにこやかに笑われ、一峰先生がその絣姿で大変恐縮されたというような話などもあった。
　
デビュー後、華々しく数多くの連載をこなし、生涯現役を貫いた巨人の若き日の話はそれだけでも、まるでドラマのような光彩を放っている。

デビュー２作目の作品。

細部にまで描き込まれた背景や人物の服装は後の一峰作品の緻密な画風の一端をすでにのぞかせている。
華やかな色使いは「カラーが描けるのがうれしくてね、ずっと描いていたかったのを覚えている」と照れながら話されていた一峰先生の笑顔が思いおこされる。

一峰先生の野球漫画は『黒い秘密兵器』を代表に数多く存在する。
この『野球横丁』もそうだが、その他にも後述する『どろんこエース』『甲子園の土』『一発カン太』など多数に及ぶ。

　一峰先生の記念すべき初テレビ化作品。
　主人公の髪型の独特のフォルムに、いまだにファンも多い作品。
　当初は８ページでスタートしたものの、当時の編集長の強力な後押しで翌月からいきなり３２ページに増ページされた。
　現在においてはネットにも動画は見当たらず、幻のテレビ映画となったのが残念である。

原作は月光仮面でも有名な巨匠、川内康範先生。
後年、下積み時代に一峰先生は師匠である岡先生といかに格好よく銃を抜いたり、撃ったりするポーズを絵の中に取り入れるためにお二人で深夜の丸の内に出ては、懐にモデルガンを忍ばせて銃撃戦の練習されたというお話をしてくださったが、そうした修行の成果が作品の中にもにじみ出ている。

主演を山城新伍でテレビ映画となった作品。
『大菩薩峠』や『銭五ノ海』『太平記』などの時代劇も得意とした一峰先生の初期作品の一つ。

　一峰先生のキャラ作りの妙味が味わえる作品。
　自由に伸縮する如意棒？を片手に戦国時代の天下を取ろうとする少年僧の話。
　時代劇かと思えば潜水艦や原子爆弾などスラプスティック（ドタバタ劇）の要素もふんだんに盛り込まれた隠れた名作である。

現パナソニックの前身、松下電器（ナショナル）の一社提供でテレビ映画と同時に漫画もスタートした作品。
先生は連載開始まもなくの頃、制作サイドの方に呼ばれ、撮影を見学した折、俳優陣と最後に写真を撮ることになった。
しかし、その時の女優さんたちが着ていたセクシーなピンクのタイツ姿に「あれには参ったよ、どこを見ていいかわからないんですから」と照れながら当時の思い出をよく語られた。
ちなみにその時の女優さんは今は亡き大女優「太地喜和子」さんであったという。

この作品の後。『プロレス悪役シリーズ』や『キングZ』につながる一峰オリジナル作品。実はこうしたプロレス作品の流れで
『タイガーマスク』の執筆依頼もあったのだが、当時、一峰先生は超過密スケジュールでそれを断ったという逸話がある。
そんな話の時には一峰版『タイガーマスク』も本当に読みたかったですとお伝えしたところ「あはは、もういっぱいいっぱいでそれは無理でしたねー」と快活に笑われた先生の顔を思い出す。

一峰先生には珍しい戦記物のオリジナル作品。
筆者である私も見たことがない幻の作品。
記録には「まんが王」に６回連載とあるが単行本未発表作品の一つ。

言わずと知れた一峰野球漫画の金字塔。
当時、爆発的な人気だった魔球モノ（本作では魔の秘球）
実は『タイガーマスク』と同様で一峰先生は本作品のヒットの流れで『巨人の星』の執筆候補として依頼もあったが、過密スケジュールを理由に断られている。

連載中の原作の中で『主人公の椿が投げた球を見た観衆が「うおーーー！」と、球場を揺るがす大歓声を上げたそれは今までに見たこともない球だったのだ』と、だけ書かれたシナリオが来て、真っ青になった先生は担当編集者と二人、朝まで悩んでその誰も見たことがない球（秘球）を徹夜でフラフラになりながら作ったというエピソードが残されている。
人気の高さからアニメ化の話も持ち上がったが当時のアニメ技術では「秘球」を演出することは不可能であり、その話はお蔵入りになった。

昭和初期、当時大流行した紙芝居が原作の国民的ヒーロー『黄金バット』一峰先生も子供時代、足しげく紙芝居に通った。
お金のない時などは講釈師のおじさんの手伝いなどをしながらこの紙芝居を見ておられ、原稿の執筆依頼が来たときはもちろん、一も二もなく引き受けられたという。

当時、週刊連載を５～７本掛け持ちで描き、その他にも月刊誌や描きおろし作品などを描いて過密を極めていたころの作品。
『電人アロー』の次に開始したヒーローもの。

森永乳業の「マミー」とのタイアップ作品。
マミーと言えばつい、ミイラを連想されるがそうではなく、商品名「マミー」からつけられた。
本作のマミーは車からロケットのように発射される気象ロボットである。
気象を操り戦うアイデアはまさに秀逸で原作の久米みのる先生との黄金タッグならでは作品となっている。

秘球ではなく超球！
黒い秘密兵器の流れで描かれたオリジナル作品。
様々な秘球を生み出し『巨人の星』の原型ともいわれた。
一峰先生の秘球はここでついに超球となりやがて「原爆超球」というグランド上に原爆雲が現れる魔球の頂点を生み出した。

当時、爆発的な人気を博したプロレスもの。
一峰先生のアイデア満載の特殊能力を持つレスラーが魔人界から送られてくる。一峰先生の極太な線画が迫力の名作！